2024年4月18日

サプライチェーンのグローバル化が当たり前となった現在、「取引先がESG経営を行っているか否か」や「与信枠はどのくらい設定できそうか」などを適切に把握することは極めて重要です。しかし、海外の取引先に対して企業調査を実施するには、言語の違い、商習慣の違い、法的基準の違いなどさまざまな課題があります。

こうした複雑な課題に悩むサプライチェーン・マネージャー向けに、CRIFでは各種海外企業調査サービスやESG評価・与信判断を簡単に実施できるソリューションを提供しています。2022年に進出した日本を含め、現在は世界40ヵ国以上でビジネスを展開するなど、金融インフラの構築によって各国の経済的発展に貢献してきました。

今回は、CRIFでアジア・太平洋地域を統括するエグゼクティブディレクター、ビンチェンツォ・レスタの来日に合わせてインタビューを実施。CRIFが提供するサービスの優位性・独自性や、今後の日本市場における展望を語ってもらいました。

 

 

CRIFは金融インフラを構築し、国の発展を支援する

―はじめに、CRIFの事業の目的を教えてください。

レスタ「CRIFの目的は、金融インフラが整っていない国々で金融インフラを構築することです。

具体的には、『信用取引に必要な情報へのアクセス』『取引を可能にする情報』『リスクを軽減する情報』を提供することと言い換えられます。これらの活動は発展途上国の経済が発展するのに必要不可欠な要素であり、CRIFはこの20年間だけでも約20ヵ国で金融インフラを整え、発展を支援してきました」

―サービス提供者としてのCRIFの強みは何ですか?

レスタ「CRIFの強みは、主に2つあります。

1つ目は、CRIFの企業構造です。CRIFは上場企業ではないため、四半期ごとの『短期的な利益』を求められることがなく、長期目線での投資がしやすいと言えます。そのため、投資に対するリターン期間が長くなりがちな “小さな国”への進出や、長期的なリスクを取ることも可能です。この点は、上場企業である競合他社にはない強みと言えるでしょう。

2つ目は、CRIFの姿勢です。CRIFはクライアントのニーズに柔軟に対応し、それに沿ったソリューションを提供することを大切にしています。それは、単に製品を提供するだけではありません。クライアントの声に耳を傾け、ニーズに合わせたサービスを提供し続けている点がCRIFの強みなのです。

またCRIFは競合と競争するだけでなく、『協業』も重視しています。それは、お客様が必要とする『信頼できる情報』へより容易にアクセスできるように連携することで、業界や国の発展により貢献できるからです。この他社とも協調していく姿勢こそが、我々が選ばれる理由になっているとも考えています」

日本進出は以前からタイミングをうかがっていた

―CRIF におけるAPACの位置づけと戦略を教えてください。

レスタ「CRIFのアジア展開は、約17年前の中国進出から始まりました。そこから事業を拡大していき、インド、シンガポール、香港などさまざまな主要都市に拠点を設置するに至っています。
5年前、CRIFは『APAC(アジア・太平洋地域)で最も信頼される信用ビジネス情報プロバイダーになる』という目標を掲げました。重要なのは、『最も大きい企業』ではなく、『最も存在感のある企業』でもなく、『最も信頼される企業』という表現です。

この5年間でその目標は達成でき、その過程でAPACにおけるビジネス情報プロバイダーの最大手にもなることができました。また、業界のリーダーとしての認知度も高まり、多くの国々の方からCRIFのサービス提供を望む声もいただいています」

―CRIFは2022年に日本へ進出しましたが、なぜこのタイミングだったのですか?

レスタ「CRIFは以前から日本に注目しており、進出の時期を探っていました。日本はAPACで大きな存在感を示している国であり、CRIFにとっても重要な市場だと考えていたからです。しかし、なかなか進出のタイミングを掴めずにいました。

ところがある時、日本でビジネス情報分野のトップ企業を買収する機会が巡ってきたのです。CRIFは新しい国への進出を検討する際、『その国の業界トップ企業としての地位を確立すること』を重視しており、小さいシェアでの参入は行いません。今回の企業買収によって、それが実現できると確信しました。

また、CRIFが銀行や金融機関向けに先進的なデジタルソリューションを立ち上げたことも理由の一つです。これは、デジタル化が進む日本のような先進国の市場に非常に適したサービスであると考えました。

このように『企業買収の機会』と『市場に適合するデジタル製品のローンチ』が重なったことで、日本へ進出する絶好のタイミングだと判断しました」

―今後も進出する国は増えていくのでしょうか?

レスタ「進出する国の数を増やすことを目標にしているわけではありません。新たな国への進出は、CRIFの戦略的観点と現地の状況を考慮して慎重に判断します。

まず戦略的観点として、市場規模や経済発展段階、CRIFの既存事業との統合可能性などの観点から、ターゲットとする国を選びます。

また、現地の状況に応じて進出を検討するケースもあります。例えばタジキスタンのケースでは、信用情報機関の設立を可能にする法改正と、国際的なプロバイダーの参入を決める入札が行われたことがきっかけでした。このように、特定の国で環境が整った場合に進出を決めるということもあります。

今後も、この方針に基づいて新たな国や地域への進出を検討していきます」

「Synesgy」はESG評価と改善提案が簡単に受けられるソリューション

―今回ローンチした「Synesgy」はどのようなサービスですか?

レスタ「『Synesgy』(シナジー)は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)を管理・評価するためのソリューションです。ヨーロッパでESG規制が厳格化されたことを受け、CRIFはESG分野で独自の貢献ができると考えました。

既存のESGサービスプロバイダーやコンサルティング会社の多くは、1つの企業の分析に焦点を当てていました。具体的には、自社における温室効果ガスの排出量や、カーボンフットプリントの測定などです。私たちはこの流れを見ていて、『サプライチェーン全体を俯瞰する視点が欠けている』と感じていました。

たとえ大企業がESGを遵守していても、そのサプライチェーンに属する企業がESGに適合していなければ、全体としてのESGへの影響はマイナスになり得ます。そこでCRIFは、大企業がサプライチェーン全体のESG評価を可視化できるソリューションを開発しました」

―企業はどのようにESG評価を可視化するのですか?

レスタ「サプライチェーンの各企業が質問に回答することで、サプライチェーン・マネージャーはESG評価を簡単かつ迅速に把握できます。また、各企業は評価だけでなく、ESGにおける改善点についても具体的な提案を受けられます。

『Synesgy』のもう1つの強みは、グローバル展開していることです。現在はサービス提供している28ヵ国の企業の情報が1つのデータベースに集約されています。これにより、国やセクターごとに異なるESGの影響を考慮しつつ、ESG評価を分析できます」

「Strategy One」は与信判断を効率化できるソリューション

―もう1つの新サービス、「Strategy One」についてもお聞かせください。

レスタ「『Strategy One』(ストラテジー・ワン)は、与信戦略における意思決定エンジンとして機能します。CRIFがビジネスを始めた当初は、アクセスできる信用情報の数や量が不足していました。しかし今日では情報が溢れており、企業の課題は『情報をどのように分析し活用するか』に移っているように思います。

『Strategy One』は、情報を数値化してある出来事が起こる確率を測定します。例えば、信用リスク管理では『顧客の支払い不履行のリスク』を数値で表現します。また、『顧客離反のリスク』などもスコアリング可能です。

リスクを数値として可視化できるのはいいことですが、数値が増えてくると、次は数値に基づいて適切な意思決定を下す必要が出てきます。『Strategy One』では、顧客データの分析に基づいて意思決定ルールを自動で作成します。分かりやすい活用事例は、与信判断の自動化です。融資の申し込みに対して、融資の可否や条件、適切な商品、返済スケジュールなどを自動的に提案します。最終的には人間が判断を下しますが、分析の負担を減らして効率化を実現するという点で有用です」

―慎重に行うべき与信判断が効率化できるのですね。

レスタ「『Strategy One』はルールのカスタマイズが可能で、意思決定の変更を迅速に社内で適用できることもメリットと言えるでしょう。社内データを使ってシミュレーションを行い、特定のルールを適用した場合の全体的な効果や、判断基準の変更が受付件数に与える影響などを事前に確認できます。

『Strategy One』は、ビジネスをより迅速に行うためのツールです。会社全体の方針を客観的に決定し、パラメーターの設定を通して意思決定を自動化することで、効率的で管理しやすい意思決定プロセスが実現するのです」

これからも信頼される企業であり続けたい

―CRIFのサービスはどのような企業に使っていただきたいですか?

レスタ「まずは、貿易会社が挙げられます。海外の貿易相手や顧客の開拓、自社製品・サービスの競合分析と市場調査のために、CRIFのビジネス情報を活用していただけたらと考えています。

『Strategy One』は、金融機関やリース会社、保険会社などに最も効果を実感していただけるでしょう。ESGソリューションである『Synesgy』については、サプライチェーンを拡大したい企業、グローバル規模でサプライチェーンを構築している企業にぴったりです」

―今後の日本での展望を教えてください。

レスタ「日本はCRIFにとって非常に重要な市場です。アジアでのこれまでの実績を活用しつつ、日本でも着実に存在感を示していきたいと考えています。

将来的には、CRIFが持つ高度なソリューションやデータ分析、AI活用、デジタルチャネル向け製品などを、日本市場に適合させて展開することも考えています。より多様な製品・サービスを提供する企業へと成長を遂げていくことが、日本における今後の展望です」

―グローバルの観点での展望もお聞かせください。

レスタ「CRIFはこの20年で、イタリア・ボローニャのローカル企業から世界的に注目されるグローバル企業へと成長を遂げました。私たちの成長は、信頼の上に築かれてきたものです。

CRIFの事業の根幹は、顧客から最も価値のある財産であるデータを預かり、それを分析・加工し付加価値をつけて返すことにあります。ここで発生するコミュニケーションは、顧客との強固な信頼関係なくして成り立ちません。だからこそ、私たちは信頼を最も重要な資産と位置づけ、その信頼を築くべくソリューションやデータのセキュリティ、製品の信頼性に惜しみなく投資を続けてきました。

私たちは、信頼に値する企業であり続けることこそが、グローバルな規模での発展につながると確信しています。CRIFおよびCRIF Japanが提供するサービスに、ご期待ください」

海外企業調査、ESG評価、与信管理の効率化はお任せください

サプライチェーンのグローバル化に伴い、海外の取引先を調査する必要性は日に日に高まっています。つまり、「自社だけが健全な経営を行っていればそれでいい」という状況ではなくなりつつあるということです。しかしその一方で、海外企業の調査には困難が伴うケースも少なくありません。

海外企業調査やサプライチェーン全体のESG評価、与信管理の効率化に課題を感じているサプライチェーン・マネージャーの方は、CRIF Japanにお問い合わせください。何よりも「信頼される企業」であることを目指し、40ヵ国以上でビジネス展開してきた実績を持つ私たちが、これまでの経験や現地情報をもとに最適なソリューションを提供いたします。

CRIFの各種サービスに関するお問い合わせはこちら